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【新・関西笑談】最高のウイスキーを求めて(4)(産経新聞)

 □サントリーチーフブレンダー 輿水精一さん

 ■原酒を評価し、言葉で伝えられるか 「未来の味」決める責任を痛感した。

 −−研究所時代は、熟成に使う樽(たる)の研究に没頭されていたのですね

 輿水 大学で微生物は学びましたが、木材は教わっていません。研究所での教師役は現場の職人でした。乾燥が甘い木材を使用すると、樽にしたときに合わせ目がずれてきます。職人からはよく「樽が泣いている」と怒られました。できの悪い樽はすぐに原酒が漏れるので「樽ではなくざるをつくっている」とも言われましたね。現場の知識は教科書にはないことも多く、このときの経験はブレンダーの仕事に大いに生かされています。

 −−ブレンダーは樽についての知識も必要なのですね

 輿水 はい、研究で得た知識だけでなく、ノウハウも必要です。研究所で9年間を過ごした後、山崎蒸溜所(大阪府島本町)勤務となり、久しぶりに生産現場に戻りました。研究成果が生かせる原酒の貯蔵部門担当となり、気合が入りましたね。どの原酒をどう熟成させて、どれとどれを調合するかなどはブレンダーから指示を受けるわけですが、ただ指示通りに仕事をしても満足する製品はできません。

 −−といいますと

 輿水 樽の置き場所を少し変えるだけでも熟成の具合は大きく異なるので、現場ならではの経験が重要になります。また、樽の中の原酒は蒸発などで年間2〜3%は減少します。「天使の分け前」と呼ばれている現象です。

 −−詩的な表現ですね

 輿水 しかし、これはメーカーにとってコストになるため、いかに少なくするかが求められます。一方、蒸発を抑えようと人工的に樽を覆うと今度は熟成に失敗します。自然なままで最小限にするにはどうすればいいか。研究成果を総動員して知恵を絞りましたね。

 −−そうした現場での経験を買われ、ブレンダーとして白羽の矢が立ったわけですね

 輿水 ブレンダーは当時も社内に数人しかおらず、特別な専門家集団とのイメージを持っていました。ウイスキーづくりにおける発言力も絶大で、まさか自分がなるなんて思わない。生産現場でも熟成度合いを確認するためテイスティングはしていましたが、指示する方に回って本当に大丈夫なのか、と自問自答の毎日でした。

 −−同じテイスティングでも相違点はありましたか

 輿水 視点が違っていました。ブレンダーではいきなり課長の肩書で、まずは部下でもある先輩ブレンダーの言葉を理解するところから始まりました。先輩がした原酒に対する評価を、同じ言葉で評価できるようにならないといけません。

 −−味を言葉で表現するのは難しい

 輿水 新商品をつくるにしても、定番商品の品質を維持するにしても、すべて原酒の評価が基本となります。ブレンダーである自分の評価を、どれだけ言葉で周囲に納得させることができるかが重要。自分の判断が何年後かのウイスキーの味を決めてしまいますので、責任の重さを痛感しましたね。

 −−しばらくは休日も返上して勉強に励まれたとか

 輿水 平日はいろいろと業務があり、休日にゆっくりと原酒と向き合いたかったからです。(聞き手 藤原直樹)

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